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「──明日 上様のごに付き従い

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「──明日 上様のごに付き従い

──明日 上様のごに付き従い、安土を発つ事と相成りました」

 

光秀が大それた決意を固めた、その日の夜。

 

蘭丸は上洛の挨拶の為に、胡蝶の部屋へと忍んでやって来ていた。

 

居間の上座に座している胡蝶に、蘭丸はの姿勢を取りつつも、穏やか微笑を向けている。

 

「明日はの仕度に追われ、姫様のもとへは参れぬやも知れませぬ故、ながら今宵の内にご挨拶をと思いまして」

 

「そんな、私ごときにお気などわれますな。父上様のお側近くに仕え、何かとご多忙でしょうに」

 

「いえ、それ程のことは。  それに、上様のお側に仕えていたお陰で、はこうして姫様と出会い、

 

あなた様のとなる光栄に浴することが叶うたのですから、多少の苦労は本望にございます」

 

蘭丸様」

 

清々しい程の笑顔を浮かべる蘭丸を見て、胡蝶は少々 思い詰めたような顔をして、軽くいた。

 

「どうなされました? どこかお加減でもお悪いのですか?」https://www.easycorp.com.hk/zh/bank-account

 

「い、いえ──何も」

 

胡蝶が慌てて首を左右に振ると

 

「そう申せば、今宵はお菜津殿のお姿が見えませんね」

 

いつも姫のらにある侍女の顔が見えず、蘭丸はきょろきょろと室内を見回した。

 

「お菜津でしたら、母上様の御座所へ参っておりまする」

 

「御台様の?」

「何やら、明日の上洛のことでお話しがあるからと、少し前にお呼びがありまして」

 

「左様にございましたか」

 

「私を残しての京へ参られる故、母上様も色々とご心配事があるのでしょう」

 

胡蝶が笑って言うと、蘭丸は「え」とそうに眉をひそめた。

 

「失礼ながら──御台様も、京へ参られるのですか?」

 

「ええ。お聞き及びではありませぬか?」

 

「御台様のご上洛のことは、何も」

 

妙ですね。確かに母上様が、父上様に従って京へ参られると、わざわざこちらへ来てお話し下されたのですけれど」

 

胡蝶は小さく首をった。

 

主君の正室が共に参るというのに、出立にする、蘭丸ら小姓衆がその知らせを受けていないなんて。

 

内々の話だったのであろうか?

 

 

「まぁ、奥向きに関わることは表沙汰にせぬのが習いです故、上様もあえて申されなかったのやも知れませぬ」

 

相手を不安にさせまいと、蘭丸が楽観的に述べると

 

「かも知れませんね──明日、出立前に父上様がこちらへお越しになられるそうなので、その折に伺ってみます」

 

胡蝶もって頷いた。

 

「それよりも、蘭丸様」

 

「何でございましょう」

 

「まことに……よろしいのですか?」

 

「よろしいとは?」

 

蘭丸に問い返され、胡蝶はいがちにもごもごと口を動かすと

 

「私のような者を妻になさる事にございます」

 

ややあってから、ひと息に言った。

その言葉を聞いて蘭丸は軽く双眼を見開くと、すぐにばんだような表情を浮かべた。

 

「また左様な事を。以前にも申しましたが、某は──

 

「分かっています。 蘭丸様が私の境遇を全て理解し、受け入れて下さっていることは」

 

相手の言葉をるように告げると、胡蝶はまた躊躇った様子を見せてから、静かに蘭丸の顔を見た。

 

「ただ、私が妻となっても、あなた様の為に何もして差し上げることが出来ませぬ故……それがのうて」

 

申し訳なさそうに胡蝶が目を伏せると、蘭丸はそういう事かと笑みを浮かべ、小さく首を左右に振った。

 

「そのような心配はご無用にございます。某は、姫様を己の妻に迎えられることを、我が身のれと思うておりまする。

 

姫様が側にいて下さる──それだけで、この上ない幸福を感じているというのに、いったい他に何を望むことがありましょう?」

 

……

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