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「兄の力になりたいという、そなた様のお心意気は見上げたものじゃ。 なれども、そのような事で主が無闇に城を留守にして如何なされまする!?」
「されど、有名無実とは申せ、主家の斯波氏が守護代に討たれとあらば織田家の一大事!
そのような時に、城の中で安穏と様子だけを窺っているような耄けた真似など、この信勝には出来ませぬッ」
「落ち着きなされませ!」
報春院はひと声張ると
「既にこちらからは柴田殿が出陣致しておるのです。そなたがわざわざ那古屋の城まで出向く必要などございませぬ」
「なれど─」
「お願いですから、母の言うことを聞いて下され」
やおら、母親らしい諭すような口調で信勝に告げ始めた。
「清洲の信友様は我らのお味方じゃ。信長殿を廃し、そなたが織田家の総領となれるよう、多大なるご尽力をして下さっているお方なのですよ」
「母上、またそのような話を」公司銀行開戶 - easyCorp
「良く聞きなされ信勝殿。勝敗はまだ決してはいないのです。万が一にも清洲勢の勝利という結果に終われば、
そなた様のその安易な行動故に、我らは強大な後ろ楯を失うことになるのですよ!?」
「……」
「ご宗家の支持がなければ、そなたの擁立が尚更難しゅうなる。そうなれば、この先何十年とあの信長殿の天下──。
嗚呼!なりませぬ!それだけは何としても阻止しなくては!」
報春院は急にヒステリックな声を上げると
「とにもかくにも、那古屋へ参ることはこの母が許しませぬ!早急に己の座所へお戻りなされませ」
威嚇するような目付きで、狼狽顔の信勝を見据えた。
虚栄心が強く、誇り高いこの母のこと。
下手に反発などしようものなら、乱心紛いのことを仕出かし兼ねないだろう。
そうなると、親族思いの信勝の心が「く」の字が向けるのは、一族の謀反より、実母の懇願である。
信勝は鬱屈の思いを抱えながらも、黙って自室に引き返す他なかった。
一方 柴田勢と清洲勢の戦闘は、安食村から誓願寺(じょうがんじ/成願寺)前に場を移して激しく繰り広げられていた。
清洲勢は奮闘し、暫くは寺前で防ぎ続ていたが、とうとう町口の大堀の中へと追い込まれてしまった。
河尻与一、織田三位らも切ってかかり、二・三間を隔てて柴田勢と戦ったが
「突けー!怯まずに突き続けるのじゃー!!」
「恐れるな!見よ、あちらの槍は短いぞー!」
清洲勢の持つ槍は短く、柴田勢の槍が長かったことが勝敗の行方を分けた。
信長のあの長槍戦法がここに来て有効に働いたのである。
清洲勢も一歩も引かずに戦い続けたが、河尻与一、織田三位を含む大和守家の家臣たち三十名ほどが討死した。
この折、亡き守護・義統の家臣・由宇喜一(ゆうきいち)なる、まだ十七、八の若人が参陣していたが、
彼は果敢にも湯帷子の姿のままで突き進み、見事 織田三位の首を討ち取ったとして、信長からひとかたならぬ称賛を受けたという。