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高杉は何食わぬ顔で三津の持つお猪口に少し酒を足した。
「私だけ生きててごめんなさい。ふくちゃん殺してごめんなさいって。」
三津は新たに注がれた酒を何の躊躇いもなく口にした。それを赤禰が少しヒヤヒヤしながら見ていたが殺しての一言に一瞬で無になった。
「ふくちゃんを殺した?ふくちゃんって誰や。」 https://www.easycorp.com.hk/zh/bank-account
「新ちゃんの妹で私と同い年で……友達でした。ふくちゃん新ちゃんの後追って喉元斬ったって聞きました。私が生き延びたから命が二つ消えてもて,それが辛くて苦しくて……。死にきれなくて謝るしか出来ひんくて……。」
それを聞いて高杉と赤禰は顔を見合わせた。
「すまん,辛い事思い出させた……。」
高杉が真剣な顔で謝ると三津は笑って首を横に振った。
「もう乗り越えました。新ちゃんは私に生きて幸せになって欲しかったんですよ。
物心つく前に母は死んでて母の事何一つ覚えてない上に病で父も亡くしました。
新ちゃんは生きて私に幸せを知って欲しかったんやと思うんです。
だからこうして皆さんと出逢わせてくたんです。
ってこれも私の都合のいい想像やけど,でも小五郎さん紹介した時“頑張れ”って言ってくれたんですよ!新ちゃん!
やから今日の宮城さんの伝言も本物ですよ。」
三津は眦に涙を光らせながら笑った。へらへら笑っておかわりちょうだいと高杉にお猪口を差し出した。
「今日はそれでやめとき。もうゆっくり休み。」
赤禰が三津を後ろからやんわりと抱きしめて自分の胸にもたれさせた。赤禰に背中を預けながら三津は赤禰を見上げておやすみなさいと微笑んで瞼を閉じた。
「三津さん案外闇が深い……。」
高杉は額に手を当てて溜息をついた。
「乗り越えたって言っちょるけど多分心の奥底にはまだ罪悪感あるんやろうな。ふくちゃん死なせたって。」
腕の中で眠る三津が急に消えてしまわないか不安になり,抱き留める腕に自然と力が入った。
「もしこの先その罪悪感に飲まれそうになったらその時は俺らが引っ張り出してやればいいそっちゃ。やけぇ俺らもいつまでも囚われとったらいけん。武人,次は宮城さん笑かしに行くぞ。」
「そうやな。」
二人はお猪口を酒で満たして宮城に献盃した。「三津さんに呑ませたらまた笑い話の一つや二つ作れるなと思ったけど今日は失敗やな。」
赤禰の腕に抱き留められてすやすや眠る顔があまりにも安らかで見入ってしまう。
「幸せを知って欲しくて俺らに引き合わせたって言う癖に,自分の幸せそっちのけで自分と同じ痛みを味わう人を救おうとしたり,同じ思いして欲しくないけぇ人の事ばっか気にしとるようにしか見えん……。どうやったら三津さんは幸せになるんよ……。」
声を震わす赤禰の横で高杉は静かに酒を呑んだ。
「俺らが幸せそうにしちょったらええんやない?人を幸せにするのが三津さんの幸せやとしたらそれが一番やろ。
後は桂さんと九一が馬鹿みたいに甘やかすけぇ心配いらん。」
「人を幸せにするのが幸せなら早よ嫁に行って子供作って家族幸せにしちゃればいいのに。」
赤禰は何でそれをせん?と眠る三津に問いかけた。
「そうだよな……。私も早くそうして欲しいんだが……。」
「桂さん。音も無く現れるのやめてくれん?」
いつの間にか背後に立っている桂に向かって心臓に悪いと高杉が口を尖らせた。女共に責め立てられて桶屋に帰ったんじゃないのか。
「いくら赤禰君が居るとはいえ晋作と晩酌なんて聞いたら心配でしかないだろ。赤禰君,三津を返してくれないか?」
この体勢でいるのも楽じゃないから助かりますと赤禰は三津を引き渡した。
「もうこのまま三津連れて隠居したい……。」
「はいはい駄目ですよー。部屋貸しますから明日も明後日も職務は全うしてくださいね。って事で武人さんの部屋お邪魔します。」
今度はどこからともなく入江が現れて,布団も敷いてますからどうぞと桂達の世話を焼く。
桂は“はぁー隠居したい”と言いながら廊下の奥へ消えて行った。